注文住宅を提案するプロと見込み客の間には情報の非対称性が非常に大きい。見込み客の知識水準が低いため、コミュニケーションが成立する分野は限られてくる。その1つが間取りである。だが間取りにフォーカスしすぎると、その後のプロセスで難航する場合もあり得る。
釣りに例えて説明する。釣りは大まかにに以下の3フェーズに別れる。①アタリを得るフェーズ、②合わせて乗せるフェーズ、③バラさずに釣り上げるフェーズ。
間取りは非常に食いつきのよいエサなので、①は非常に得やすい。そして②の段階に進むためには、エサや仕掛けなどの組み合わせを試行錯誤する。これはさまざまな傾向の間取りを提案してみるかたちになる。
そして最終フェーズの③。これは契約に至る段階だが、この段階になると間取りといったエサや仕掛けの面を超えて、性能や価格、設備や素材、そしてなにより価格といったトータルが適切でないと釣り上げられないということになる。言い換えると、間取り提案の際にトータルでまとめ上げるという最終段階を意識した提案をすることが重要になる。
そういう意味で、初期段階で掴んでおくべき情報は予算である。希望に対して予算に余裕があれば、提案可能な間取りはタイプは多様であり、アタリを得ることにフォーカスしても次のフェーズの障害にはならない。
逆に希望に対して予算に余裕がなければ、建てるのに費用が掛かるプランを提案すると、合わせたり、吊り上げたりする段階で齟齬が生じ、プランの方向性を調整(修正)している間に逃げられてしまうことになりやすい。
コストの兼ね合いで注意すべきなのがL型やコの字型のプランだ。床面積に対して外壁面積が増える(外壁率が高くなる)ために、同じ床面積でも高額なプランになる。
昨今の建て主の大きな関心事であるプライバシーを確保しやすく、外観上も変化を付けやすいため、アタリは非常に得やすいのだが、希望に対して予算が不足気味な場合、この種のプランを提案してしまうと、最終的には予算調整でぐちやぐちゃになり、ご破産になりやすい。
同じように階段状に平面が雁行したプランもたまに見かける。これも開放感が得やすく、外観の変化も付けやすいのだが非常にコストが掛かるため、予算をある程度把握した上で提案すべきだと言えるだろう。
L型のプランはプライバシーを守りつつ庭に対して開くことができるが、コストは割高になる。
コの字型プランはL型プランよりさらにプライバシーを確保しやすいが、L型より外壁面積が大きくなり、割高となる。
予算に余裕のある見込み客向けのプラン。